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Clova Rae Smith

1980年代のアメリカのHIP HOPシーンをきっかけに徐々に認知されるようになった、グリルズ。

現在ではストリートシーンを中心に徐々に、日本でも認知度を高め始めている。

VogueやRolling Stoneなど数々の有名誌、ビヨンセなど世界的なアーティストのグリルズを手がけてきたClova。最近ではPinterestとのコラボイベントも大きな注目を集めた。

26歳にして、すでに輝かしいキャリアを残してきた彼女だが、これまでの活動や苦悩、挫折など、普段は見ることができない彼女の一面も今回のインタビューでは見せてくれた。




キャリアのスタートについて


私は2017年にキャンバーウェル芸術大学で基礎を学び、2018年にロンドンのセントラル・セント・マーチンズでBAジュエリーデザインを学びました。

大学1年生のときにコースで使用する銀などの材料費を賄うために、Instagramのアカウントを開設し、ジュエリー制作の様子を投稿するとともに、ジュエリーの販売を行っていました。ブランドを始めてから2年目の終わりには、これが私の仕事になっていました。この時はコロナ禍だったためオンラインの授業が中心でしたが私はグリルズ制作のために、よく欠席していました(笑)。

この時期は人々がグリルズの魅力を再認識し始めていたときでもあったから、一人で100件以上のオーダーを受けていたの。私の姉はデーティングアプリで出会った人に、私へのグリルズの制作を頼まれることもあったみたいです。

あまりにもたくさんの人が歯型をとるキットを購入するものだから、業者から直接私に連絡がきてしまい、私は認定歯科医師ではなかったから、このときは少し焦ったかな(笑)。



グリルズの制作の始まりについて


制作を始めたのは2020年で純粋にグリルズに強い魅力を感じ、どのようにして作られるのか知りたいという気持ちから始めました。当時は今ほどネット上に多くの情報はなく、苦労したことを覚えています。

私が制作を始めた当初はJoshua Myszczynskiというジュエリー職人から強い影響を受けていました。彼はとてもクールなグリルズを作っていて、信じられないほどの才能を持っています。ありがたいことに私とJoshは友達になり、制作初期段階の頃は彼から制作のコツなどを教わっていました。Josh本当にありがとう!

私が最初に注目を浴びたのは、2021年により多くの人に私の作ったグリルズを見てもらいと思い行ったプレゼント企画のときです。このときに棘のデザインを用い、多くの人から良いリアクションをもらいました。

このときはまだ、造形的なグリルズや友人もためにしか作っておらず、販売が行ない、ここまで需要が高くなるとは思ってもいませんでした。

それ以来、グリルズ制作が私の本業になり、この4年間で700人以上のグリルズを制作しました。




グリルズの魅力とは

他のジュエリーとは異なる、独特で魅力的な存在であることだと思います。

悪い歯並びに悩んでいたお客様が、「自分の歯が嫌いだった」「ずっと恥ずかしくて隠していた」と話してくれたことがありました。でも、私が作ったグリルズをつけることで、自信を持てるようになったと言ってくれました。

このように人々に自信を与え、幸せにできることは、私がこの仕事の中で一番好きな部分です。笑顔は健康にも良いと言われていますし、新しいグリルズをつけたお客様が喜びに満ちた表情を見せてくれるのは、私にとって本当に特別な瞬間です。これこそが、私が今もこの仕事を続けている理由です。



あなたの最大の強みはなんですか?


私の最大の強みは独創性です。

私は常に自分に忠実で、それに加え強い個性的なスタイルや感覚を持っています。それが常に私の作品やデザインに強い影響を与えてきました。


Clovaがデザインしたグリルズケース
Clovaがデザインしたグリルズケース


活動拠点をロンドンからニューヨークに移したきっかけは?


ロンドンでの多忙な生活により燃え尽きてしまったからです。

多い時には1週間で40個のグリルズをひとりで作り、まさに仕事漬けの毎日でした。友達と過ごす時間も取れず、ひとりでの制作活動は孤独で人との関わりが次第になくなっていきました。最終的には体が動かなくなり、仕事をすることができないほどになってしまいました。そこで、2022年5月から数ヶ月間ニューヨークで休養をとることに決めました。

当時は週に3〜4回ほどSNSを更新していたので、更新をやめてしまうことで仕事やフォロワーなど、今まで築き上げてきたものを失ってしまうのではという恐怖はありました。また、SNSのアルゴリズムは恐ろしいもので、私のデザインを真似をして制作している人を次々と表示しました。これは当時追い詰められていた私の精神状況をさらに深刻なものにしました。

数ヶ月後には貯金が底をつきてしまったタイミングで、私はグリルズの制作を再開することに決めました。正直これは私にとって非常に難しい決断でした。注文を希望する人々からのプレッシャーは非常に大きく、自身の体調を優先するために仕事の再開を延期しようとすると、嫌がらせのメッセージや、「乗り越えろ」と言われたりしました。

その経験から、私はSNSとの距離を適切に取るようになり、以前ほど頻繁には投稿しなくなりました。



ロンドンとニューヨークでは注文を受けるデザインに違いはありますか?


昔からジュエリーはファッションだけでなく、ステータスや富の象徴としての側面も持ちます。ニューヨークでは、ジュエリーにお金をかける人多い印象です。また、アメリカ人は華やかなデザインを好む傾向があり、ダイヤモンドなどの派手な装飾が人気です。一方で、イギリス人は富を見せびらかすことに関しては少し控えめで、ニューヨークに比べると落ち着いたデザインが好まれていると思います。

また、現在イギリスは経済的な問題を多く抱えているため、金の価格が過去最高に高騰しているので、ジュエリーの購入に以前ほど積極的ではありません。

ジュエリー職人の中でも、金を使用したアクセサリーを在庫として作ることが難しい人が多いのも事実です。



グリルズは日本ではまだ、アンダーグラウンドなイメージをもつ人が多いのですが、海外ではどんな人からオーダーを受けますか?


ニューヨークでは音楽業界からの影響もあり、ロンドンよりもグリルズに興味をもつ人が多いです。

これまで様々な職業の人からオーダーを受けてきました。ミュージシャンやタトゥーアーティスト、俳優などはもちろん、弁護士や医者、高校生からのオーダーを受けたこともあります。割合でいうとクリエイティブな仕事をしている人が多いのは事実です。



先日のPinterestとのコラボイベントについて詳しく聞かせてもらえますか?


Pinterestの、「Goddess Complex」というトレンド予測に関連したプレゼント企画で当選者のグリルズを作成しました。

イギリスとアメリカから数名の当選者が選ばれ、私が直接出向きグリルズを作成するというものでした。それぞれの当選者には、私が今回のために特別にデザインしたグリルズをプレゼントしました。

私は今回のために特別なグリルズコレクションをデザインし、当選者たちはその中から好きなデザインを選び、さらに自分の選んだストーンでカスタマイズしました。選ばれたストーンは、スピリチュアルな癒しを促すものなど、さまざまなことに関連した特性を持つ宝石からインスピレーションを得たものでした。

今回のイベントはただ単にグリルズのコレクションをデザインできただけでなく、ゴールドのグリルズを無償で提供するというプロジェクトに関われたことは本当に素晴らしい経験でした。彼らと実際に会い、一緒に特別なものを作り上げることができて、私はとても嬉しかったです。





今後の活動について


将来的には可能性があるかもしれませんが、26歳になったばかりなので、今はまだ活動拠点を増やすことは考えていません。事業拡大については常に考えたり迷ったりしていますが、今のところ踏み出す気持ちにはなれません。

過去に従業員を雇ったり、規模を大きくしたこともありましたが、私は基本的に一人で仕事をする方が好きです。私はアーティストであり、メーカーになりたいわけではないのです。従業員を抱えたり店舗を持つことは大きな責任が伴います。私は旅をすることが好きですし、縛られたりするのは好きではないです。また旅をすることが私の創造力を膨らませてくれますしね。

現在は完全予約制で月に10件ほどの注文しか受けていません。そのおかげで、一つひとつの作品にじっくり向き合うことができ、バーンアウトせずに続けられます。今のやり方が、私にとって最も理想的で、お客様にも最高のサービスを提供できる方法だと考えています。それぞれの作品を愛情と集中を持って制作しています。



今後、世界で活躍することを目指す若者へアドバイスがあれば聞かせてもらえますか。


私からのアドバイスは、「自分らしくいること」です。私はトップの芸術大学に通いながら自身のブランド活動をスタートしました、そこでは教授から「今やっていることをやめて、大学の勉強に集中しなさい」と何度も言われました。でも、私はその言葉を聞きませんでした。

自分が本当に楽しいと思えることを見つけて、自分のために作品を作ってください。境界を壊し、自分らしく発信すれば、人々は共感し、あなたをサポートしてくれるはずです。

私が注目されるきっかけになったグリルズも、すべて私自身が身につけたいと思って作ったものでした。私は与えられたチャンスをすべて掴み、ブランドを築くためにひたすら進み続けました。成績は決してトップではありませんでしたが、最終的には『DAZED』の「UAL卒業生の注目リスト」に選ばれることができました。

これまでのコラボレーションも、彼らの方から私に連絡をくれました。これは私が「自分らしくいること」をやめなかったから実現したと思っています。


 
 
 

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